税理士の綱紀

税理士の使命

税理士法第1条
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場おいて、申告納税制度の理念にそって、納税者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

脱税相談等の禁止

税理士法36条
税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。

信用失墜行為の禁止

税理士法37条
税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

非税理士に対する名義貸しの禁止

税理士法37条の2
税理士は、第52条又は第53条第1項から第3項までの規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならない。

脱税相談等をした場合の懲戒

税理士法45条
1.財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第36条の規定に違反する行為をしたときは、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。
2.財務大臣は、税理士が、相当の注意を怠り、前項に規>定する行為をしたときは、戒告又は2年以内の税理士業務の停止の処分をすることができる。

税理士業務の制限

税理士法第52条
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならない。

税理士の職業倫理

 税理士の職業倫理については、特に税理士法で定める上記条文によって規制されています。 税理士のホームページはインターネットを開くと見るのが大変なくらい沢山ありますが、このように「税理士の綱紀」について触れたものは少ないと思います。しかし私たちが税理士の仕事をするのに大変重要なことなので少しだけ触れてみたいと思います。

「独立した公正な立場」で業務を行い、納税義務の適正な実現を図るためには、脱税の相談や不真正書類の作成をすることは許されません。
また、信用失墜行為の禁止については、自らの脱税・委嘱者から預かったお金の流用・詐欺・横領・飲酒運転・無免許運転・そして税理士でない者(ニセ税理士)に名義貸しをすることの禁止。これは、「税理士業務の制限」にも触れることになります。他にも第38条、お客様から業務等で知り得た秘密を守らなければならない、秘密を守る義務。別のお客様に、例え茶飲み話であっても「A商店はB社と取引をして儲かっているのに法人にする話をしてもケチだからお金がかかる話は聞いてくれない」とか話をしてはいけません。また、第41条の2、従業者の仕事を監督しなければならない、使用人等に対する監督義務等があります。従って、「私の書いた字ではない、職員が勝手にやったことだから私は知らない、私に責任はない」と責任を免れることはできません。

 そして、これらの非違行為を行うと財務大臣から大変厳しい懲戒処分を受けることになる場合があります。毎年6月と12月の官報に処分を受けた者が公告されます。懲戒処分には、「戒告」、「2年以内の税理士業務の停止」、「税理士業務の禁止」の三つがあります。一番重い「税理士業務の禁止」の処分を受けた者は廃業せざるをえません。今はこんな世の中ですから、他人事でなく、1件でもお客様を失いたくない気持ちは解ります。期限ぎりぎりに申告書作って「急にこんなに税金払えと言われても払えないよ、何とかしてくれよ」と言われて、何とかしたために懲戒処分を受けた方もいらっしゃるようです。

独立した公正な立場で業務を行うということは「お客様に従なれば、法に従ならず。法に従なれば、お客様に従ならず」ということで、期中に業績を予測して、事前に話をして納得していただいても、税金の納付書を見ると・・・。お客様にいい顔をされない日は、なくならないということでもあります。

 館林支部の綱紀監察部長もこの四月で3期6年目になります。今年度で終わりになりますが(この次はご勘弁願いたい)、この間に会務の中での話や直接相談・苦情を聞くことも少なくありませんでした 。①「今頼んでいる会計事務所は、毎月集金に来るが、帳簿を見ないで決算の時だけ帳簿を預かっていって、申告期限前日の夕方に来て特に決算の説明もなく、明日までにこれだけ税金を払ってくださいと言ってきます。こんな仕事しかしていないのに毎月顧問料を払わなければいけないのか」とか ②「職員任せで税理士が全く顔を見せないが、税理士はうちの会社のことをわかっているのか」とか ③「資料を預かるだけで、こちらの話も余り聞かないで、決算の数字の説明もなく、銀行に指摘されて税理士が勝手な数字で作っていることが解ったので、そんな仕事をしていて金とっていいのか」とか ④「職員が朝10時から夕方6時まで応接間に籠って仕事をしていくが、帰る前に「先月は少し儲かってますね」位の話しかしてくれません。それ以上の説明はなく、こんな状況でお金を払って、昼食と夕食まで出しているのですが、他はどうなんですか」とか業務品質の話から小学生の道徳レベルの話まで色々あります。

 しかし、これらが税理士法の「信用失墜行為の禁止」等に抵触するかというと一方的な話もあり、当事者の資料等でも見せていただかないと本当のことは解らないので対応できません。お互いの信頼関係等難しい問題もあるので、当事者同士でよく話し合って前向きに解決して下さいとしか申し上げられません。そうお答えしても、数日後また連絡があることがあります。「言われた通り話はしてみたが、へらへら笑っているだけでどうにもならない。大声を出せば黙ってしまうし、なぜ、あんな奴が税理士になれたんだ、きっとその勉強だけして、世の中の事を勉強しなかったから、この様なんだ」と更にお怒りのお話を聞くこともありますが、もうこのような話になると職業倫理の範疇ではなく、人としてのモラルの問題なのではないのでしょうか。
 モラルの話で、もうひとつ注意することがあります。当然のことですが「報酬以外のお金を欲しがらない、頂かない」人間関係が良い時は、「有難うございます、すみません」で済んでも、一度関係が悪くなった時は、これが大きな火種になることもあります。「あの時はあんなに良くしてやったの今になったら・・・」本当に怖いです。
平成27年4月から37条の2「名義貸しの禁止」が新たに設けられました。これにより税理士の名義を借りてニセ税理士行為をする者を取り締まるだけでなく、名義を貸した税理士も厳しく取り締まる方向に今後進んでいくように思えます。税理士業界も高齢化が進んでいます。税理士資格は、一身専属ですが、「家業」になっている事務所も少なくありません。主宰している税理士(父)が亡くなったら、家族従業員(妻、子、孫までいることもあります)は税理士資格がないと明日からの生活に困ることもありますので、「家業」を守るため、およそ通えない遠くの登録したての税理士に主宰者になってもらってでも業務を続けている所もあるようです。
名義貸しをした税理士は非違行為が公になると財務大臣から懲戒処分をされ、加えて経済犯としても刑事罰を受けることになることもあります。少々のハンコ代ではソロバンが合いません。しかし健全な納税者の方を守るためには、これは当然の処置だと思います。
 もし、印鑑証明書等で氏名、所在を明示した方(原則匿名の方は、対応できません)から、「信用失墜行為の禁止」に抵触する疑いのあるような資料を提供されて処分を求められてきたら、その時は綱紀監察部が調査します。そして明らかに会則及び税理士法に違反する行為があったと判断された事例については、本会(関東信越税理士会)の理事会の承認を経て会則処分を行い、更に財務大臣に報告し、最終的に財務大臣が懲戒を行うか否かを決めることになります。
 他人事ではなく、自らも注意して職業会計人としての矜持を忘れず、節義を持って業務を行っていかなければならないと思っています。そして大事なことは、税理士法に触れることなく「今、お客様のために何ができるか」を考え、行うことだと思います。

税理士の営業活動(広告)について

 税理士の営業活動(広告)については、「綱紀規則の運用取扱細則」の第2条(不正競争の禁止)、第3条(不正行為の禁止)に定めています。
そして「会員の業務の広告に関する細則」の第3条(禁止される広告)では(1)事実に合致していない広告、(2)誘導又は誤認のおそれのある広告、(3)誇大又は過度な期待を抱かせる広告、(4)特定の会員又は会員の事務所と比較した広告、(5)法令又は日本税理士会連合会若しくは本会の会則及び規則に違反する広告、(6)税理士の品位又は信用を損なうおそれのある広告と定めています。

最近DM等を使った(3)に該当するような「私が指導すれば貴社の利益を3倍にします」(6)に該当するような「税理士を替えるのは簡単です。私がお手伝いします」そんな綱紀案件を散見するようになり、綱紀監察部の指導対象になっています。
「税理士会会員の業務の広告に関する運用指針」では、税理士に求められる信用及び品位を保持する観点から取り扱いの指針が細かく示されています。
もし営業活動をするのなら、このような会則等をよくご覧になってから行ってもらいたいものです。

税理士が営業活動(広告)を行うのは非常に難しいです。税理士である会員は、税理士会という組織に身を置かなければなりませんので、会員が非違行為をすれば組織の秩序を乱すことになります。そうなると綱紀監察部の指導対象になります。
また、あまりにもいい加減な営業活動をすれば、税理士法第37条(信用失墜行為の禁止)に触れます。こちらは、場合によると国税局の税理士管理官の指導対象になることもあります。

 本職は市の広報に広告を掲載していますが、「税理士会会員の業務の広告に関する運用指針」に記されている「税理士の業務は、専門家の立場で申告納税制度を支える公共的な使命を前提としており、職業としての適正な報酬を得ることはあっても、単に営利を追求するだけの事業とは一線を画すべきである。業務広告は、ともすると業務拡大や顧客獲得を目的として行われることも多いので、その場合でも税理士の使命の理念の尊重を優先すべきである」という一文を念頭に置き、税の無料相談に努めて公益の実現を目指したいと思っています。

社会保険労務士の年末調整業務(業際問題)

 当支部では、社会保険労務士の年末調整業務の広告についても税理士法に触れる行為はしないように注意勧告しています。
平成14年6月6日に日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会は確認書を作成し、その中には「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。」という文章があります。
しかし平成21年に日税連綱紀監察部が社会保険労務士による年末調整業務について全国の社労士会のHPにリンクする社労士のHPの調査を行った結果、914のHP中145(15.9%)に年末調整の記載があり、是正を求める申し入れをしましたが返答はなく、未だに解決されていません。本職は、賃金計算と年末調整という業際問題の垣根は、賃金計算の市販ソフトで源泉徴収票、法定調書の合計表まで作成できてしまうことにも問題があると思っています。。